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第3章:フレームワークの4つの型

— 名前は違っても、構造は4種類しか存在しない

AIエージェントを語るとき、Dify、LangGraph、LangChain、AutoGen、CrewAI、Flowise、Assistants API──とにかく名前が多い。

だが、これは「名前の多さ」に惑わされているだけだ。

実際には フレームワークのアーキテクチャは4つの型に還元できる。どんな製品やOSSも、このどれか・もしくは混合型でしかない。

これを知らないと、「製品比較」「技術選定」「実装設計」すべてが迷走する。


3.1 エージェントフレームワークは4つの"型"に分類できる

  1. ノーコード・ワークフロー型(Dify / Flowise / LangFlow)
  2. 状態機械型(LangGraph / LCEL)
  3. 会話型マルチエージェント(AutoGen / CrewAI)
  4. タスクルータ型(AgentEngine / A2A / Assistants API)

これ以外の分類は不要。すべてのフレームワークは、この4つの掛け合わせで表現できる。

2025年以降、OpenAI Agents SDK、Google ADK(Agent Development Kit)、Claude Agent SDK など新しいSDKが登場しているが、すべてこの4型のどれか・もしくは混合型である。


3.2 各型の詳細

① ノーコード・ワークフロー型(Dify / Flowise / LangFlow)

構造的特徴

  • GUIでフローを並べる
  • 「実行ステップ」を可視化して制御する
  • LLMの推論と実行が混ざりやすい

強み

  • PoCが最速で作れる
  • 現場の非エンジニアに最適

弱点(核心)

  • 文脈がGUIにリークする
  • プロンプトにタスク手順が混ざりがち
  • LLMが「実行まで抱える」ため破綻しやすい

つまり、構造的に安定しない。エージェントOS思想とは最も相性が悪い。


② 状態機械型(LangGraph / LCEL)

構造的特徴

  • グラフで「状態遷移」を定義
  • LLMは「思考する場所」だけに閉じ込められる
  • 実行ステップはコード側で固定される

強み

  • 破綻しない
  • 脱線しない
  • 自律タスクに圧倒的に強い

弱点

  • 柔軟性が低い
  • 創発は弱い(人間との往復が必須)

非創発 × 自律 の領域では最強。だが 創発 × 伴走 には設計しづらい。


③ 会話型マルチエージェント(AutoGen / CrewAI)

構造的特徴

  • Agent同士がメッセージで会話してタスクを進める
  • 「役割を複数持たせる」構造が発生しやすい
  • 文脈が汚染されやすい

強み

  • デモは派手
  • 創発的なやり取りが可能

弱点

  • 責任の所在が曖昧になりやすい
  • 文脈の純度が保てない
  • ループしやすい
  • コスト爆発しやすい

「誰が判断の責任を持つか」が構造的に曖昧なのが根本原因。ただし、この領域は急速に進化している。OpenAI Agents SDKのHandoff(制御の主語を明示的に移す構造)やGoogle ADKのManager-Workerパターンなど、「責任の所在を構造で固定する」アプローチが実績を出し始めている。会話型マルチエージェントの本質的な弱点(責任の曖昧性)は残るが、それを構造で塑ぐ手段は増えている。


④ タスクルータ型(AgentEngine / A2A / Assistants API)

構造的特徴

  • LLMはタスク選択だけ行う
  • 実行はすべて MCP / API / 外部ワーカーに逃がす
  • 「推論と実行の完全分離」を実現しやすい

強み

  • エージェントOS思想と完全一致
  • 文脈純度を保てる
  • 安定性が高い
  • プロンプトが薄くてすむ

弱点

  • ツール設計の質に性能が依存する
  • 所有するツールが弱いとエージェントも弱い

最も「OSとしてのエージェント」を成立させる形式。


3.3 「名前ではなく構造」で理解する方法(写像ルール)

どんなフレームワークでも、次の4問に答えれば この4型のどれか に分類できる。

  1. LLMをどこで呼んでる?(推論層 or 文脈層)
  2. 実行をどこに置いてる?(タスク層 or 推論層)
  3. 文脈(役割・価値観)をどこで保持してる?
  4. フロー制御は誰が担当してる?(LLM or 外部)

これで、

  • Flowise → 型①
  • CrewAI → 型③
  • OpenAI Assistants → 型④
  • Vertex AI Agents → 型④+RAG内蔵
  • LangChain → ②+④の混合

2025年以降の新SDKも同様に分類できる:

  • OpenAI Agents SDK(2025年3月)→ 型④(タスクルータ型)。Handoff(エージェント間の制御移譲)、Guardrails(入出力検証)、Tracing(デバッグ)をプリミティブとして持つ。思想は「AIはTask Router」
  • Google ADK(2025年後半)→ 型②+型④の混合。Sequential / Parallel / Loopのマルチエージェントパターンを8種提供。状態機械的な制御とタスクルーティングの両方を持つ
  • Claude Agent SDK(2025年後半)→ 型④(タスクルータ型)。Claude CodeのコアプリミティブをSDK化。「ループの中でツールを使う」思想

全部読み解ける。


3.4 読者が何を学ぶべきか

  • 製品名ではなく構造で見ろ
  • 「型」を理解すると技術選定が一瞬で終わる
  • エージェントOSを支えるのは ②と④ の組み合わせ
  • デモではなく安定性と純度で選べ

この章だけで、読者は「二度とフレームワーク選びで迷わない」状態になる。


3.5 次へのブリッジ

次章は 「OSとしての文脈制御」 に入る。

第4章:エージェントOS実装—文脈、役割、価値観、ルールの「持ち方」を具体化する


Last Updated: 2026-04-06

Code: MIT / Content: CC BY-SA 4.0